コロナ禍で気づいた『凡才の強さ』~予測不可能な時代に輝く、適応力という武器~

適応力

2020年3月、あの日のことを、あなたは覚えていますか?
突然の在宅勤務命令。止まらない感染者数の増加。次々と変わる対応方針。先が見えない不安。そして、誰もが答えを持っていない状況。
「このままうちの会社は大丈夫なのか」
「自分の仕事はどうなるのか」
「家族をどう守ればいいのか」
あの混乱の中で、私たちは痛いほど実感しました。
完璧な計画は無力だということ。
専門知識だけでは乗り越えられないということ。
そして、予測不可能な状況下で本当に必要なのは、「適応力」だということを。
パンデミックから5年近くが経った今、私たちはあの経験から何を学んだのでしょうか。
今回は、コロナ禍という未曾有の危機が明らかにした「凡才の強さ」について深掘りしていきます。

  1. 危機が暴いた「専門性」の限界
    1. ケーススタディ1:A社の対応の遅れ
    2. ケーススタディ2:B社を救った「何でも屋」
    3. なぜ専門性だけでは危機を乗り越えられないのか
  2. なぜ「器用貧乏」が危機を乗り越えたのか
    1. 適応力の正体:T字型からπ字型人材へ
    2. クロス・ファンクショナルな思考の威力
    3. 実例:リモートワーク移行を成功させたC社
  3. パンデミックが教えた5つの真実
    1. 真実1:計画は無意味ではないが、計画通りには進まない
    2. 真実2:専門知識より、学習能力が重要
    3. 真実3:個人のレジリエンスより、関係性のレジリエンスが重要
    4. 真実4:効率より、冗長性が生存を決める
    5. 真実5:孤独な天才より、つながる凡才が勝つ
  4. 「アンラーニング能力」という凡才の武器
    1. 「学ぶ」より「学びほぐす」が重要な時代
    2. パンデミック下でのアンラーニングの実例
    3. 50代・60代だからこそできるアンラーニング
  5. リモートワーク時代に浮き彫りになった「人間力」
    1. 画面越しで失われたもの、残ったもの
    2. 「雑談力」という凡才の武器
    3. デジタルツールに使われる人、使いこなす人
  6. 不確実性の中で安定する凡才の特性
    1. VUCAからBANIへ:さらなる不確実性の時代
    2. 「アンカー」としての凡才
    3. 「多様な引き出し」という安定装置
    4. レジリエンスの源泉:「意味づけ」の力
  7. アフターコロナに求められる人材像
    1. ハイブリッドワークが常態化した世界
    2. 「ウェルビーイング」重視の時代
    3. 「つなぐ力」の価値が最大化する時代
  8. まとめ:危機を機会に変える凡才の思考法

危機が暴いた「専門性」の限界

ケーススタディ1:A社の対応の遅れ

製造業A社は、業界でも有数の技術力を誇る企業でした。優秀なエンジニアが揃い、各自が高度に専門化された役割を担っていました。

しかし、2020年春のパンデミック初期、A社の対応は思いのほか遅れました。

問題は何だったのか。

専門家たちは、自分の専門分野の最適解しか考えられなかったのです。

  • 製造部門は「工場の稼働率」だけを心配した
  • 営業部門は「顧客との契約」だけを懸念した
  • 人事部門は「労務管理の法的側面」だけに集中した
  • 経営企画は「財務指標」だけを見ていた

誰も、全体を俯瞰して「今、会社として何をすべきか」を考えられなかった。各部門が部分最適を追求した結果、全体としては機能不全に陥ったのです。

これは、第7回でお話しした「専門家集団の陥りがちな罠」そのものでした。                                                                                                                                          

ケーススタディ2:B社を救った「何でも屋」

一方、同業のB社では、まったく異なる展開がありました。

B社にも危機は訪れました。しかし、ある一人の「何でも屋」と呼ばれていた管理職が鍵となり、状況を変えたのです。

彼は40代後半。営業、企画、工場勤務、海外駐在と様々な部署を経験してきた、いわゆる「器用貧乏」でした。特別な専門性はありませんでしたが、会社のあらゆる部門の事情を理解していました。

パンデミック初期の混乱の中、彼はこう動きました:

  • 製造部門の「工場を止めたくない」という思いを理解しつつ、営業部門の「顧客の安全が最優先」という主張も理解した
  • 人事部門の「法的リスク」への懸念と、現場の「社員の不安」の両方に耳を傾けた
  • 経営層の「会社存続」への危機感と、現場の「日々の業務」への不安を橋渡しした

結果として、B社は迅速に在宅勤務体制に移行し、顧客との信頼関係を保ちながら、社員の安全も確保できました。

専門家ではない「凡才」のおかげで、危機を乗り切ることができたのです。

なぜ専門性だけでは危機を乗り越えられないのか

キャリア研究において、予測不可能な環境下での適応について、重要な知見があります。

スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱した「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を、第3回でご紹介しました。この理論は、キャリアの8割は予期せぬ出来事によって形成されると指摘しています。

そして、予期せぬ出来事に対応するためには、5つの行動特性が重要だとクランボルツは述べています:

  1. 好奇心(Curiosity):新しい学習機会を探索する
  2. 持続性(Persistence):失敗に直面しても努力を続ける
  3. 柔軟性(Flexibility):態度や環境を変化させる
  4. 楽観性(Optimism):新しい機会を可能なものとして捉える
  5. リスクテイク(Risk Taking):不確実な結果に直面しても行動を起こす

パンデミックは、まさに「予期せぬ出来事」の極致でした。そして、これらの5つの特性を持っていたのは、深く専門化した専門家ではなく、様々な経験を積んできた「凡才」だったのです。

なぜか。

専門家は、自分の専門領域の「正解」を知っています。しかし、正解のない問題に直面したとき、その知識が逆に足かせになることがあるのです。

心理学で「機能的固着」と呼ばれる現象があります。特定の問題解決方法に慣れ親しむと、別の方法が見えなくなる現象です。

専門家は、自分の専門分野の「標準的な解決法」に固執しがちです。しかし、パンデミックのような前例のない状況では、標準的な解決法は存在しません。

一方、「器用貧乏」な凡才は、もともと「これが絶対の正解」という固定観念を持っていません。様々な分野を経験してきた中で、「状況によって正解は変わる」ことを体感しているからです。

なぜ「器用貧乏」が危機を乗り越えたのか

適応力の正体:T字型からπ字型人材へ

第2回でお話ししたように、真のジェネラリストは「T字型人材」を超えた「π字型人材」です。

  • T字型人材:一つの専門分野を深く持ち、幅広い知識も持つ
  • π字型人材:複数の分野で「そこそこ深い」知識を持ち、それらをつなぐ

パンデミックで価値を発揮したのは、まさにこのπ字型人材でした。

なぜなら、パンデミックへの対応は、単一の専門分野では完結しない複合的な問題だったからです:

  • 医療的側面:感染予防、健康管理
  • IT的側面:リモートワーク環境の整備
  • 人事的側面:労務管理、メンタルヘルス
  • 財務的側面:資金繰り、コスト削減
  • 営業的側面:顧客との関係維持
  • 法務的側面:契約変更、労働法対応

これらすべての側面を理解し、統合的に判断できる人材。それが、π字型の「凡才」だったのです。

クロス・ファンクショナルな思考の威力

パンデミック対応で成功した企業に共通していたのは、「クロス・ファンクショナル・チーム」の存在でした。

クロス・ファンクショナル・チームとは、異なる部門や専門分野のメンバーで構成されるチームです。組織行動論の研究によれば、このようなチームは以下の特性を持ちます:

  • 視点の多様性:異なる専門分野からの多角的な分析
  • 迅速な意思決定:部門横断的に即座に判断できる
  • 統合的な解決策:部分最適ではなく全体最適を追求できる

そして、このようなチームを機能させる鍵を握るのが、第6回でお話しした「のり代」の役割です。

異なる専門分野の言語を翻訳し、立場の異なるメンバーを調整し、全体の方向性を示す。この役割を担えるのは、様々な経験を持つ「凡才」なのです。

実例:リモートワーク移行を成功させたC社

IT企業C社では、パンデミック直後、全社員500名を1週間で完全リモートワークに移行させることに成功しました。

この迅速な移行を主導したのは、人事部の課長でした。彼女は文系出身で、IT知識は「そこそこ」程度。しかし、彼女には以下の経験がありました:

  • 営業部での勤務経験(顧客対応の現場を理解)
  • システム導入プロジェクトの経験(ITの基本と制約を理解)
  • 海外拠点での勤務経験(遠隔コミュニケーションの課題を理解)
  • 人事としての労務管理経験(法的側面と社員の不安を理解)

彼女は各部門の「言語」を理解していたため、以下のことができました:

  • IT部門に「現場が本当に困っていること」を伝える
  • 営業部門に「セキュリティの重要性」を理解させる
  • 経営層に「社員が抱える不安」を報告する
  • 現場社員に「会社の方針の背景」を説明する

結果として、各部門がバラバラに動くのではなく、一つの方向に向かって協力する体制ができたのです。

専門家ではない彼女が成功した理由。それは、「全体を見る目」と「つなぐ力」を持っていたからです。

パンデミックが教えた5つの真実

真実1:計画は無意味ではないが、計画通りには進まない

経営学の古典的な格言に、こんな言葉があります。

「計画は無用だが、計画を立てることは不可欠である」
― ドワイト・D・アイゼンハワー

パンデミックは、この言葉の意味を痛感させる出来事でした。

多くの企業が、2020年初頭には精緻な年次計画を立てていました。しかし、3月にはそのすべてが無効になりました。

しかし、だからといって計画が無意味だったわけではありません。

計画を立てるプロセスで、「何が重要か」「どこにリソースがあるか」「誰が何を担当するか」を整理していた企業は、計画変更も迅速にできました。

ここで重要なのは、計画への態度です。

  • 固定的な態度:「計画通りに進めなければならない」
  • 適応的な態度:「状況に応じて計画を柔軟に変えていく」

専門家は前者に陥りがちです。なぜなら、自分の専門分野には「標準的な手順」があり、それに従うことが正しいと学んできたからです。

一方、様々な経験をしてきた凡才は、後者の態度を持ちやすいのです。過去の経験で、「計画通りにいかないことの方が多い」ことを知っているからです。

第3回でお話しした計画的偶発性理論は、まさにこの適応的な態度を重視しています。計画は立てるが、予期せぬ出来事を「活用」する柔軟性を持つ。

パンデミックで成功した人材は、この柔軟性を持っていました。

真実2:専門知識より、学習能力が重要

2020年春、私たちは誰もが「初心者」でした。

感染症の専門家も、リモートワークの専門家も、経済対策の専門家も、誰も「パンデミックへの完璧な対応策」を持っていませんでした。

この状況下で価値を発揮したのは、「すでに持っている知識」ではなく、「新しいことを学ぶ能力」でした。

キャロル・ドゥエック教授の「グロース・マインドセット(成長マインドセット)」の概念を、第9回で触れました。

  • 固定マインドセット:能力は生まれつき決まっており、変えられない
  • グロース・マインドセット:能力は努力によって成長する

グロース・マインドセットを持つ人は、未知の状況に直面しても「学べばいい」と考えます。一方、固定マインドセットを持つ人は、「自分の専門外だからできない」と考えます。

パンデミック初期、多くの人が新しいスキルを学ばなければなりませんでした:

  • Zoomなどのビデオ会議ツールの使い方
  • リモートでのチームマネジメント
  • オンラインでの営業手法
  • デジタルツールでの業務効率化

ここで差が出たのは、年齢でも専門性でもありませんでした。「学習への態度」でした。

実際、MITとハーバードの研究者たちによる2021年の調査では、パンデミック下でのパフォーマンスと相関したのは、既存の専門知識よりも「学習の柔軟性」だったことが報告されています。

そして、この学習の柔軟性を持ちやすいのは、様々な分野を経験してきた「凡才」です。なぜなら、過去に何度も「新しい分野を学ぶ」経験をしてきたからです。

第1回でお話しした孔子の姿勢を思い出してください。

「学びて時に之を習う、亦説ばしからずや」

孔子は73歳まで学び続けました。年齢に関係なく、新しいことを学ぶことが喜びだったのです。

パンデミックが教えた教訓。それは、「何を知っているか」より「どう学ぶか」が重要だということです。

真実3:個人のレジリエンスより、関係性のレジリエンスが重要

レジリエンス(resilience)とは、困難な状況から回復する力、逆境に適応する力を意味します。

パンデミック以前、多くの企業が「個人のレジリエンス」を強化しようとしていました。ストレス耐性の高い人材を採用し、メンタルヘルス研修を実施する、といった具合です。

しかし、パンデミックで明らかになったのは、個人のレジリエンスには限界があるということでした。

長期化する不安、先の見えない状況、隔離された環境。どれだけストレス耐性が高い人でも、一人では耐えられませんでした。

一方、危機を乗り越えた人々に共通していたのは、「関係性のレジリエンス」でした。

組織心理学者のカレン・ライマー教授らの研究によれば、チームのレジリエンスを決定するのは、メンバー個々の能力ではなく、以下の要素です:

  • 心理的安全性:失敗や弱さを見せ合える環境
  • 相互サポート:困難な時に助け合える関係
  • オープンなコミュニケーション:率直に話し合える文化
  • 共有された目的意識:「一緒に乗り越える」という意識

そして、こうした関係性を構築できるのは、第5回でお話しした「真のリーダー」の役割です。

カリスマ的なリーダーではなく、自ら弱さを見せ、メンバーの不安に耳を傾け、全員が貢献できる場を作るリーダー。

パンデミック下で最も価値を発揮したリーダーシップは、まさにこのスタイルでした。そして、このスタイルのリーダーシップを発揮できるのは、完璧な専門家ではなく、人間らしさを持った「凡才」なのです。

真実4:効率より、冗長性が生存を決める

経営学では長年、「効率化」が追求されてきました。無駄を省き、最小のリソースで最大の成果を出す。

ジャスト・イン・タイムの在庫管理、最適化されたサプライチェーン、削ぎ落とされた組織構造。すべて効率化の産物です。

しかし、パンデミックは、この効率化一辺倒の経営が脆弱であることを露呈しました。

サプライチェーンが一箇所で止まると、全体が機能不全に陥る。特定の役割を担う社員が一人欠けると、代わりが誰もいない。

生態学には「冗長性(redundancy)」という概念があります。一見無駄に見える重複や予備が、実はシステムの強靭さを支えているという考え方です。

パンデミックを乗り越えた組織に共通していたのは、この「冗長性」でした:

  • 複数のスキルを持つ人材:誰かが欠けても代わりができる
  • 予備のサプライヤー:一つが止まっても別のルートがある
  • 余剰のリソース:緊急時に活用できる資源

そして、組織における最も重要な冗長性が、「何でもできる人材」の存在です。

第6回でお話しした「何でも屋」「のり代」の価値を思い出してください。

通常時は「専門性がない」と見られがちな彼らですが、危機時には最も価値を発揮します。なぜなら、どの部署でも、どの役割でも、「そこそこ」対応できるからです。

効率化を追求した組織は脆い。しかし、「無駄」に見える凡才を抱えた組織は、強靭なのです。

真実5:孤独な天才より、つながる凡才が勝つ

Appleのスティーブ・ジョブズ、TeslaのイーロンマスクFacebookのマーク・ザッカーバーグ。

私たちは長年、「孤高の天才」に憧れてきました。一人の卓越した才能が、世界を変える。そんなストーリーに魅了されてきました。

しかし、パンデミックが示したのは、問題解決には「つながる力」が不可欠だということでした。

ワクチン開発を例に取ってみましょう。

通常10年以上かかるワクチン開発が、わずか1年で実現しました。これは一人の天才科学者の功績ではありません。

世界中の研究者、製薬会社、政府機関、物流企業が、かつてない規模で協力した結果です。異なる専門分野の知見を統合し、リソースを共有し、情報を即座に共有する。この「つながる力」が、人類史上最速のワクチン開発を可能にしたのです。

組織レベルでも同じことが起きました。

危機を乗り越えた企業は、部門の壁を越えて協力しました。営業、製造、人事、財務が、それぞれの専門性を持ち寄り、全体最適を追求しました。

そして、この協力体制を可能にしたのは、部門間を「つなぐ」人材でした。

第2回でお話しした「器用貧乏」の真価が、ここで発揮されたのです。

「アンラーニング能力」という凡才の武器

「学ぶ」より「学びほぐす」が重要な時代

パンデミックで多くの人が直面したのは、「これまでの常識が通用しない」という現実でした。

  • 対面での営業が常識だった → リモート営業に切り替える必要がある
  • オフィスで働くのが当然だった → 在宅勤務が標準になる
  • 顧客と直接会うことが信頼の基盤だった → オンラインで関係を構築する必要がある

このとき必要だったのは、新しいスキルを「学ぶ」ことだけではありませんでした。それ以上に重要だったのは、古いやり方を「捨てる」こと、つまり**「アンラーニング(学びほぐし、学習棄却)」**でした。

アンラーニングとは、組織学習論において重要な概念です。1978年、組織行動論の研究者であるポール・ナイストロムとウィリアム・スターバックが初めて提唱しました。

彼らは、組織が新しい環境に適応するためには、過去の成功体験や古い知識を意図的に「捨てる」プロセスが不可欠だと主張しました。

なぜアンラーニングが難しいのか。

心理学には「確証バイアス」という認知バイアスがあります。人間は、自分の既存の信念を確認する情報を重視し、それに反する情報を無視する傾向があります。

「今までこのやり方で成功してきた」という経験は、強力な確証バイアスを生み出します。特に、そのやり方で長年成功してきた専門家ほど、新しいやり方を受け入れるのが困難です。

一方、「器用貧乏」な凡才は、そもそも「これが唯一の正解」という固定観念を持っていません。様々な部署、様々な役割を経験する中で、「やり方は状況によって変わる」ことを体感しているからです。

パンデミック下でのアンラーニングの実例

D社の営業部長は、60歳。30年以上、対面営業一筋でキャリアを築いてきました。「営業は足で稼ぐ」が信条で、週に20件以上の顧客訪問をこなしていました。

2020年春、突然の外出制限。彼は強く抵抗しました。

「オンラインでは信頼関係は築けない」
「顔を見なければ、商談はまとまらない」

しかし、選択肢はありませんでした。渋々、オンライン営業を始めました。

最初の1ヶ月は苦戦の連続でした。しかし、2ヶ月目、彼は驚くべき発見をしました。

オンライン商談は、ある意味で対面より効率的でした。

  • 移動時間がないため、1日に10件以上の商談が可能
  • 資料共有がスムーズで、説明が分かりやすい
  • 顧客側も気軽に参加でき、意思決定者を集めやすい

3ヶ月後、彼はこう語りました。

「30年間、自分が信じてきたやり方が、唯一の正解ではなかった。むしろ、状況に応じて変えるべきだったんだ」

これがアンラーニングです。

古い知識を捨て、新しい知識を取り入れる。そして、「唯一の正解」という固定観念そのものを手放す。

凡才の強みは、もともとそういう固定観念が弱いことです。専門家としての「プライド」がない分、柔軟に変われるのです。

50代・60代だからこそできるアンラーニング

「年を取ると頭が固くなる」というのは、本当でしょうか。

神経科学の研究によれば、脳の可塑性(変化する能力)は、年齢とともに低下するのは事実です。しかし、それは「学べなくなる」ことを意味しません。

重要なのは、学習への態度です。

カリフォルニア大学の神経科学者マイケル・マーゼニックの研究によれば、高齢者でも、意識的に新しいことに挑戦し続ければ、脳の可塑性は維持されることが示されています。

そして、40代・50代・60代には、若い世代にはない強みがあります。

豊富な経験という「比較対象」を持っていることです。

20代の若者にとって、今のやり方しか知りません。しかし、40代以上の私たちは、様々な時代、様々な環境を経験してきました。

  • バブル経済の時代
  • 失われた20年の時代
  • デジタル化の波
  • グローバル化の進展
  • そしてパンデミック

これらすべてを経験してきた私たちは、「時代によって正解は変わる」ことを肌で知っています。

この経験知こそが、アンラーニングの基盤となるのです。

第4回でお話しした「45歳からの第二の人生設計」を思い出してください。人生の後半は、過去の成功体験に固執するのではなく、新しい可能性に開かれる時期です。

パンデミックは、40代・50代・60代の私たちに、この「開かれる力」を試す機会となりました。そして、多くの凡才たちが、その力を発揮したのです。

リモートワーク時代に浮き彫りになった「人間力」

画面越しで失われたもの、残ったもの

リモートワークへの移行は、私たちから多くのものを奪いました。

  • 廊下での立ち話
  • ランチタイムの雑談
  • 会議前後の何気ない会話
  • 相手の表情や空気を読む感覚
  • オフィスという物理的な「共有空間」

これらは一見、業務に直接関係ない「無駄」に見えるかもしれません。しかし、実はこれらの「無駄」こそが、信頼関係を構築し、チームワークを生み出していたのです。

2021年、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、リモートワーク下での生産性を調査しました。その結果、興味深い事実が明らかになりました。

定型的な業務の生産性は維持、あるいは向上した。しかし、創造的な協働作業や、新しいアイデアの創出は著しく低下した。

なぜか。

創造的な仕事には、「偶然の出会い」や「予期しない会話」が重要な役割を果たすからです。しかし、リモートワークでは、すべてが「予定された会議」になります。偶然性が失われるのです。

この状況下で価値を発揮したのは、意識的に「人間的なつながり」を作れる人材でした。

「雑談力」という凡才の武器

E社のプロジェクトマネージャー、45歳の女性は、チーム全員が在宅勤務になった後も、チームの士気を維持することに成功しました。

彼女がやったことは、シンプルでした。

毎朝の定例会議の最初の5分間を、「雑談タイム」にしたのです。

  • 「昨日、何か面白いことあった?」
  • 「最近見たドラマ、何かおすすめある?」
  • 「子どもの学校、どう?大変?」

一見、業務に関係ない会話です。しかし、この5分間が、チームメンバーの心理的安全性を劇的に高めました。

オランダの組織心理学者エイミー・エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性」の概念を、第5回で詳しくお話ししました。

心理的安全性とは、「自分が発言しても、拒絶されたり罰せられたりしないという確信」です。

そして、この心理的安全性を作る最も効果的な方法が、実は「雑談」なのです。

雑談には、以下の機能があります:

  • 人間性の共有:相手も自分と同じように喜怒哀楽を持つ人間だと実感する
  • 共通点の発見:「私も同じ!」という瞬間が親近感を生む
  • 弱さの開示:完璧ではない自分を見せ合うことで信頼が深まる
  • 非公式な情報交換:公式な場では言えないことを共有する

専門家は、しばしば雑談を「時間の無駄」と考えます。効率的に、業務の話だけをしようとします。

しかし、凡才は知っています。雑談こそが、本当の仕事を円滑にする潤滑油だということを。

なぜ凡才が雑談上手なのか。

様々な部署、様々な立場を経験してきた中で、「人間関係が仕事の質を決める」ことを体感しているからです。そして、専門用語で武装する必要がないため、誰とでも人間として対等に話せるのです。

「察する力」がデジタル化で希薄化した

日本のビジネス文化において、長年重視されてきたのが「察する力」でした。

  • 上司の表情から、機嫌を読み取る
  • 会議の空気から、発言すべきタイミングを感じ取る
  • 同僚の様子から、困っていることを察する
  • 言葉にならない不安や不満を感じ取る

これらは、対面だからこそ可能でした。しかし、リモートワークでは、この「察する」情報の多くが失われました。

画面越しでは、表情の微妙な変化が見えません。沈黙の意味が読み取れません。誰かが困っていても、気づきにくくなります。

この状況で重要性が増したのが、言語化する力です。

察するのではなく、言葉にして確認する。
暗黙の了解ではなく、明示的に伝える。
「分かっているはず」ではなく、「理解しているか」を確かめる。

しかし、この言語化は、単に言葉数を増やせば良いわけではありません。

重要なのは、相手の立場や感情に配慮した言語化です。

  • 「この仕事、いつまでにできる?」ではなく、「今、他に抱えている仕事との兼ね合いで、いつ頃なら無理なく対応できそう?」
  • 「分かりました」ではなく、「私の理解では〇〇ということですが、合っていますか?」
  • 「問題ありません」ではなく、「この点は問題ないですが、もし〇〇の状況になったら、改めて相談させてください」

このような言語化ができる人材。それは、相手の立場を理解し、文脈を読み取り、感情に配慮できる人材です。

そして、こうした能力を持つのは、高度な専門知識を持つ専門家ではありません。様々な立場を経験してきた「凡才」なのです。

デジタルツールに使われる人、使いこなす人

パンデミック初期、多くの企業が一斉にデジタルツールを導入しました。

Zoom、Slack、Microsoft Teams、Trello、Notion…。

これらのツールを「使いこなせるか」で、生産性に大きな差が出ました。

興味深いことに、ここで差を作ったのは必ずしもIT知識の有無ではありませんでした。

ツールの「目的」を理解しているかどうか、でした。

F社では、50代の管理職が、チームのSlack運用で悩んでいました。メッセージが膨大で、重要な情報が埋もれてしまう。

そこで彼は、IT部門のアドバイスを受けながら、こんな工夫をしました:

  • チャンネルを目的別に整理(雑談、業務連絡、プロジェクトA、プロジェクトBなど)
  • 重要な情報は「ピン留め」で常に見えるように
  • 朝会と夕会の時間を決めて、リアルタイムで全員が集まる時間を作る
  • 絵文字リアクションの使い方をルール化(既読の意味、了解の意味、質問があるの意味)

彼はITの専門家ではありませんでした。しかし、「チームが何に困っているか」を理解し、「ツールをどう使えば解決できるか」を考えました。

これは、第2回でお話しした「つなぐ力」そのものです。技術とユーザーをつなぐ。ツールの可能性と現場のニーズをつなぐ。

専門家は、ツールの「機能」を説明できます。しかし、凡才は、ツールを「人間のために」使えるのです。

不確実性の中で安定する凡才の特性

VUCAからBANIへ:さらなる不確実性の時代

第2回でVUCAについてお話ししました。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

パンデミックは、まさにVUCAの極致でした。しかし、最近、さらに新しい概念が提唱されています。

BANI(バニ)です。

2020年、未来学者のジャミ・ズリーダが提唱したこの概念は、VUCAを超えた現代の状況を表現しています:

  • Brittle(脆い):見かけは堅牢でも、突然崩壊する
  • Anxious(不安な):先が見えず、常に不安を感じる
  • Non-linear(非線形な):原因と結果が比例しない
  • Incomprehensible(理解不能な):あまりに複雑で理解できない

パンデミックは、まさにBANIの世界でした。

堅牢に見えた経済システムが突然崩壊し(Brittle)、誰もが不安を抱え(Anxious)、小さな出来事が予測不可能な大きな影響を及ぼし(Non-linear)、全体像が理解できない(Incomprehensible)。

このような世界で、何が安定をもたらすのか。

「アンカー」としての凡才

心理学に「アンカリング効果」という概念があります。不確実な状況下で、人は何か確実なもの(アンカー)を求めるという理論です。

組織におけるアンカーとは何か。

それは、変わらない価値観信頼できる人間関係です。

パンデミック下で、多くの企業が業務内容を変えました。働き方を変えました。戦略を変えました。

しかし、成功した企業は、変えないものも明確にしていました。

  • 顧客への誠実さ
  • 社員の安全第一
  • 長期的視点での意思決定
  • オープンなコミュニケーション

そして、これらの「変わらない価値観」を体現し、組織に安心感を与えたのが、長年その組織にいた「凡才」たちでした。

G社では、60代の総務部長が、パンデミック初期の混乱の中で、こんなメッセージを全社員に送りました:

「状況は刻々と変わっています。正直、私たちも正解を持っていません。でも、一つだけ確実なことがあります。この会社は、70年間、どんな困難の中でも社員を守ってきました。今回も同じです。皆さんの安全と生活を、最優先に考えて判断します。一緒に乗り越えましょう」

このメッセージは、具体的な対策を示したわけではありません。しかし、社員に大きな安心感を与えました。

なぜか。

「変わらないもの」を示したからです。

不確実な世界で、人が求めるのは新奇性ではありません。安定です。信頼です。「この人たちとなら、大丈夫だ」という確信です。

そして、この確信を与えられるのは、華々しい実績を持つスター社員ではなく、地道に組織を支えてきた「凡才」なのです。

「多様な引き出し」という安定装置

投資の世界に「分散投資」という原則があります。一つの資産に集中投資するのではなく、様々な資産に分散することで、リスクを軽減する戦略です。

これは、人材にも当てはまります。

一つの専門性に特化した人材は、その専門性が不要になったとき、価値を失います。しかし、様々な経験を持つ人材は、状況が変わっても、別の引き出しを開けられるのです。

H社のマーケティング部の課長は、文系出身で様々な職種を経験してきました:

  • 営業(5年)
  • 広報(3年)
  • 人事(4年)
  • 海外駐在(3年)
  • マーケティング(現在5年目)

パンデミックで、従来のマーケティング手法(展示会、対面イベント)がすべて不可能になったとき、彼女は柔軟に対応しました。

  • 営業経験から → 顧客との直接対話の重要性を理解し、オンライン個別相談会を企画
  • 広報経験から → メディアリレーションを活用し、オンラインセミナーを報道してもらう
  • 人事経験から → 社内の様々な部署の専門性を理解し、ウェビナーの講師を調整
  • 海外駐在経験から → 海外拠点の成功事例を参考に、日本でも展開

彼女は、マーケティングの専門家ではありませんでした。しかし、様々な経験という「引き出し」を持っていたため、状況に応じて最適な引き出しを開けられたのです。

これが、凡才の強さです。

専門家は深い引き出しを一つ持っています。しかし、凡才は浅めの引き出しをたくさん持っています。

不確実な時代、どちらが有利か。

答えは明らかです。

レジリエンスの源泉:「意味づけ」の力

オーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルは、ナチスの強制収容所での体験を綴った『夜と霧』の中で、こう述べています。

「人間が何を経験するかは重要ではない。その経験にどんな意味を見出すかが重要なのだ」

パンデミックは、多くの人にとって苦しい経験でした。しかし、同じ経験でも、そこからどんな意味を見出すかで、その後の人生は大きく変わります。

  • ネガティブな意味づけ:「すべてを失った。もう終わりだ」
  • ポジティブな意味づけ:「これは新しいスタートのチャンスだ」

意味づけの研究において、重要な知見があります。

人生経験が豊富な人ほど、逆境に対してポジティブな意味づけができる傾向があります。

なぜか。

過去に何度も困難を乗り越えてきた経験があるからです。「あのときも大変だったが、何とかなった」という記憶が、今の困難にも「何とかなる」という希望を与えるのです。

第4回でお話しした「ナラティブ・アプローチ」を思い出してください。

人生を物語として捉え直すとき、苦しかった経験も「成長のための試練だった」と意味づけることができます。

40代・50代・60代の凡才たちは、豊富な人生経験を持っています。その経験の中には、成功も失敗も、喜びも苦しみもあります。

しかし、これらすべてを経験してきたからこそ、パンデミックという新たな困難にも、意味を見出すことができるのです。

「これも、また乗り越えられる」

この確信が、不確実な時代の最大の武器です。そして、この確信を持てるのは、人生の波を経験してきた「凡才」なのです。

アフターコロナに求められる人材像

ハイブリッドワークが常態化した世界

2025年の現在、多くの企業が「ハイブリッドワーク」を採用しています。完全出社でもなく、完全リモートでもなく、その中間です。

このハイブリッドな環境で求められるのは、以下の能力です:

1. コンテキスト・スイッチング能力

対面とオンラインを切り替えながら、同じ成果を出せる能力。

  • 対面会議では、雰囲気を読みながら柔軟に対応
  • オンライン会議では、明示的なコミュニケーションで進行
  • チャットでは、簡潔に要点を伝える
  • 電話では、声のトーンで感情を伝える

状況に応じて、コミュニケーションスタイルを切り替える。この柔軟性が重要です。

2. 非同期コミュニケーション能力

ハイブリッドワークでは、全員が同じ時間に同じ場所にいるとは限りません。

  • 今すぐ回答が必要な質問と、後でいい質問を区別する
  • 相手のタイムゾーンや働く時間を考慮する
  • 文章だけで、誤解なく意図を伝える
  • 返信のタイミングを適切に判断する

これらは、高度な「察する力」と「伝える力」の両方が必要です。

3. 自律的な仕事管理能力

誰も見ていない環境で、自分を律して成果を出す能力。

しかし、これは単なる「自己管理」ではありません。重要なのは、適切なタイミングで助けを求められることです。

一人で抱え込まず、困ったときに「助けてください」と言える。これは、第5回でお話しした心理的安全性と関連します。

弱さを見せることを恐れない。これは、凡才の特性です。完璧でないことを自覚しているからこそ、助けを求めることに抵抗がないのです。

「ウェルビーイング」重視の時代

パンデミックは、多くの人に「人生で本当に大切なもの」を考えさせる機会となりました。

働き方改革、ワークライフバランス、メンタルヘルス。これらの言葉は以前からありましたが、パンデミックで一気に重要性が増しました。

そして今、多くの企業が「ウェルビーイング(well-being:身体的、精神的、社会的に良好な状態)」を重視し始めています。

2023年のギャラップの調査によれば、従業員のウェルビーイングが高い企業は、低い企業と比較して:

  • 離職率が59%低い
  • 生産性が17%高い
  • 顧客満足度が10%高い

ウェルビーイングは、単なる「優しい」施策ではありません。ビジネスの成果に直結するのです。

そして、組織のウェルビーイングを高めるために重要なのが、人間らしいリーダーシップです。

第5回でお話しした「真のリーダー」を思い出してください。

完璧を装うのではなく、弱さを見せる。数字だけを追うのではなく、メンバーの感情に配慮する。短期的成果だけでなく、長期的な成長を重視する。

このようなリーダーシップを発揮できるのは、カリスマ的な天才ではありません。人間らしさを持った「凡才」なのです。

「つなぐ力」の価値が最大化する時代

パンデミック後の世界は、以前より分断されています。

  • リモートワーク派 vs 出社派
  • ワクチン賛成派 vs 慎重派
  • 経済重視派 vs 安全重視派
  • デジタル世代 vs アナログ世代

これらの分断を乗り越え、組織を一つにまとめる力。それが、これからの時代に最も必要とされる能力です。

そして、この「つなぐ力」を持つのは、まさに凡才です。

なぜなら、凡才は様々な立場を経験してきたため、異なる価値観を理解できるからです。

  • リモートワークの効率性も、対面の重要性も理解できる
  • 経済の論理も、安全への配慮も両方分かる
  • デジタルツールの便利さも、アナログの温かみも感じられる

どちらか一方に偏るのではなく、両方の立場を理解し、バランスを取る。これが、第2回でお話しした「器用貧乏」の真価です。

第10回でお話ししたように、分断される世界を統合できるのは、真のジェネラリストです。そして、その真のジェネラリストこそが、様々な経験を積んだ「凡才」なのです。

まとめ:危機を機会に変える凡才の思考法

パンデミックが教えた5つの教訓(再確認)

ここまで見てきたように、パンデミックは私たちに重要な教訓を与えました:

1. 計画より適応力
完璧な計画を立てることより、状況に応じて柔軟に変われることが重要

2. 専門知識より学習能力
すでに持っている知識より、新しいことを学べる能力が重要

3. 個人の能力より関係性
一人の優秀さより、助け合える関係性が組織を強くする

4. 効率より冗長性
無駄を削ぎ落とした組織より、余裕のある組織が危機に強い

5. 孤高の天才より協働する凡才
一人の天才より、つながり合う多くの凡才が世界を変える

これらすべての教訓が指し示すのは、凡才の時代が来たということです。

「凡才の哲学」全10回の集大成として

第1回から第10回まで、私たちは「凡才の哲学」を探求してきました。

  • 第1回:孔子が示した「普通の人が偉大になる条件」
  • 第2回:器用貧乏こそが最強のスキルである理由
  • 第3回:計画的偶発性が教える成功法則
  • 第4回:45歳からの第二の人生設計
  • 第5回:真のリーダーシップとは何か
  • 第6回:何でも屋が最も価値ある理由
  • 第7回:優秀な専門家ばかりの組織が失敗する理由
  • 第8回:40代・50代社員が輝く組織の作り方
  • 第9回:「特別でありたい」という呪縛からの解放
  • 第10回:真のジェネラリストが世界を救う理由

そして今回、第11回では、パンデミックという実際の危機が、これらすべての理論を証明したことをお話ししました。

凡才の哲学は、単なる理想論ではありません。現実の危機を乗り越えるための、実践的な知恵なのです。

次の危機に備えて:今からできること

パンデミックは終息に向かっていますが、次の危機は必ず来ます。

気候変動、地政学的緊張、技術革新による産業構造の変化、人口動態の変化…。

私たちは、常に予測不可能な変化に直面し続けます。

では、次の危機に備えて、私たちは何をすべきか。

ステップ1:自分の「引き出し」を増やす

様々な経験を意識的に積んでください。

  • 異なる部署での業務経験
  • 異なる世代との協働
  • 異なる業界の人との交流
  • 新しいスキルの学習

一つ一つは「専門性」にはならないかもしれません。しかし、それらの経験の「掛け算」が、あなただけの強みになります。

ステップ2:「つなぐ力」を意識的に磨く

組織の中で、意識的に「橋渡し役」を引き受けてください。

  • 部門間の調整
  • 世代間の翻訳
  • 経営層と現場の仲介

これらの役割は、評価されにくいかもしれません。しかし、危機の時には最も価値を発揮します。

ステップ3:学び続ける姿勢を維持する

第1回でお話しした孔子の姿勢を思い出してください。

「学びて時に之を習う、亦説ばしからずや」

年齢に関係なく、学び続けること。新しいことに挑戦し続けること。この姿勢こそが、変化の時代を生き抜く最大の武器です。

ステップ4:人間関係への投資を惜しまない

効率だけを追求せず、「無駄」に見える人間関係を大切にしてください。

雑談、飲み会、趣味の集まり。これらは一見、生産性に寄与しないように見えます。しかし、危機の時に助け合えるのは、こうした「無駄」な時間を共有した人たちです。

ステップ5:弱さを見せることを恐れない

完璧を装うのではなく、等身大の自分でいてください。

「分からない」と言える勇気。「助けて」と言える勇気。「失敗した」と認める勇気。

これらの勇気が、周囲の人も弱さを見せることを許し、結果として強いチームを作ります。

最後に:凡才だからこそ、希望がある

パンデミックという未曾有の危機を経験した私たちは、重要な真実に気づきました。

世界を救うのは、一握りの天才ではない。
多くの凡才が、それぞれの場所で、それぞれのやり方で、小さな貢献を積み重ねることだ。

医療従事者、物流業者、スーパーの店員、教師、保育士、そして無数のビジネスパーソン。

特別な才能を持たない、普通の人々が、自分の役割を果たし続けた。その積み重ねが、社会を支えたのです。

もしあなたが今、「自分は特別な才能がない」と感じているなら、それは悲しむべきことではありません。

あなたは、世界を支える「凡才」の一人なのです。

そして、次の危機が来たとき、世界を救うのは、あなたのような凡才たちです。

様々な経験を持つこと。
人とつながること。
学び続けること。
弱さを見せ合えること。
そして、自分なりの貢献をすること。

これらすべてが、あなたの強みです。そして、これらすべてが、次の時代に最も必要とされる能力なのです。


【次回予告】

次回、第12回は、「AI時代だからこそ『凡才』が輝く」をテーマにお届けします。

ChatGPTの登場以降、AIの進化は加速度的に進んでいます。多くの人が「自分の仕事はAIに奪われるのではないか」と不安を感じています。

しかし、実はAI時代こそ、凡才が最も輝く時代なのです。

  • AIに奪われない「人間らしい」価値とは何か
  • 機械ができない「つなぐ」「感じる」「調整する」力
  • 凡才の持つ「文脈理解力」の重要性
  • AI時代の新しいキャリア戦略
  • 人間にしかできない仕事の見つけ方

パンデミックが「適応力」の重要性を示したように、AI時代は「人間力」の重要性を再定義します。

凡才の哲学シリーズ、次回をお楽しみに。


【より深く学びたい方へ】

この記事を読んで、「自分の適応力をもっと高めたい」「凡才としての強みを活かしたキャリアを考えたい」と感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。

私は、キャリアコーチとして、多くのミドル・シニアの方々の「危機を機会に変える」キャリア転換をサポートしてきました。

特に、パンデミック後のキャリアについて:

  • 「リモートワークで自分の強みが発揮できなくなった気がする」
  • 「これまでの経験が、新しい働き方でどう活かせるか分からない」
  • 「変化に適応するために、何を学べば良いか迷っている」
  • 「自分の『つなぐ力』を、もっと意識的に伸ばしたい」

こうした悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

初回相談(30分)は無料です。 あなたの経験を丁寧に伺い、あなただけの「凡才としての強み」を一緒に見つけていきます。

お問い合わせは、お問い合わせフォームからお願いします。


【あなたのパンデミック体験を聞かせてください】

この記事を読んで、あなた自身のパンデミック体験を思い出したかもしれません。

  • あのとき、どんな困難に直面しましたか?
  • どうやって乗り越えましたか?
  • 何を学びましたか?
  • 「凡才の強み」を実感した瞬間はありましたか?

ぜひ、コメント欄であなたの体験を共有してください。

あなたの経験が、同じように悩んでいる誰かの励みになるかもしれません。そして、私たち全員が、お互いの体験から学び合うことができます。

パンデミックという困難を経験した私たちには、次の世代に伝えるべき知恵があります。それは、教科書には載っていない、生きた知恵です。

一人でも多くの「凡才」が、自分の経験の価値に気づき、それを誇りに思えることを願っています。


【この記事をシェアしてください】

もしこの記事が、あなたの心に響いたなら、ぜひシェアしてください。

特に、以下のような方々に届けたいと思います:

  • パンデミック下で必死に働き続けた、すべての「普通の人」たち
  • 「自分には特別な才能がない」と悩んでいる、ミドル・シニアの方々
  • 変化の時代に、自分の価値を見失いかけている方々
  • 次の危機に向けて、備えたいと考えている方々

一人でも多くの人が、「凡才であること」を誇りに思い、自分の経験と能力を信じられるようになることを心から願っています。


パンデミックという未曾有の危機は、多くのものを私たちから奪いました。

しかし、同時に、私たちに大切なことも教えてくれました。

本当に大切なのは、華々しい成功ではなく、困難な時でも前に進み続ける力。
特別な才能ではなく、人とつながり、支え合う力。
完璧であることではなく、学び続け、適応し続ける力。

そして、これらすべての力を持つのが、「凡才」なのです。

あなたも、その一人です。

次の危機が来たとき、あなたの経験、あなたの適応力、あなたの「つなぐ力」が、必ず誰かを、何かを、救います。

自信を持ってください。

あなたは、世界が必要としている人材です。

この記事が、あなたの人生にとって、小さな、しかし確かな励ましとなることを願っています。

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